製品が、用途・目的・使用環境に合わせた素材で製造され、適切な処理を施されるように、締結部品も同じ機能を備えていなければなりません。また、液体や気体の漏れを防いだり、かじり(焼き付き)を防止したり、意匠性の高さが求められる場合もあります。
新しい素材の開発や製造業の進歩に合わせて、これらの要件を満たし、安全性を担保するファスナーが多数開発され使用されています。
最近では、地球環境にやさしい製品も数多くあります。

省スペース

「安全性やデザイン性を考えてボルトの頭部は露出させたくないが、相手材が薄くザグリ加工ができない。」そんな問題を解決するために独自開発された低頭・極低頭シリーズをはじめ、頭部の薄い小ねじ、狭いところに収まるボルトやナット、ナットを必要としないタッピング機能も併せ持つビスなどがあります。機器の軽量化、コンパクト化に役立つため、携帯電話やパソコンといった電子機器、家具、安全性が求められる福祉機器にも多く使われています。
ねじそのものの小型化に加え、スパナやドライバーの入らない所や狭い間隔でボルトを設置できる六角穴付き製品など、狭い作業スペースでも使える形状の製品も多数開発されています。

ゆるみ止め

ねじは「任意の時にゆるめることができる」のが最大の利点です。しかし、「意図しないときにゆるむ」のは避けなければなりません。回転によるゆるみや母材の変形など回転によらないゆるみなど、意図に反するゆるみを抑えるため、様々なゆるみ止めを使うことができます。
ゆるみを発生させないことで、維持管理に必要な稼働停止状態を最小限に抑える、ゆるみによる事故や故障を生じさせない、コストが大幅に削減されるというメリットがあります。
組み込みが容易なワッシャー、ばね付きナット、安価で専門工具のいらないくさびナット、ベアリング用で座金が不要なキー溝加工付きナット、母材に食い込み高いゆるみ止め効果を発揮する座面リブ付きキャップボルト、ゆるみ止め加工など、施工の手間が少なく、コスト削減にも役立つ商品がたくさんあります。

かじり(焼付き)防止

ステンレスは熱が発生しやすく逃げにくいという性質から、高トルクで締結作業を行うと、その摩擦熱により素材が膨張し、おねじとめねじが圧迫されねじが回らなくなる『かじり(焼付き)』という現象が起きます。かじりを起こしたねじを無理に回転させようとすると、ねじ本体や工具、時には製品の破損を招き時間や費用の多大なロスとなります。
かじり防止には通常は潤滑剤が用いられますが、最近では、特殊表面効果処理ねじや焼き付き防止のボルトやねじが開発されており、作業効率アップや汚れ防止、意匠性を活かし、クリーンな環境が求められる半導体・食品・医療業界でも活用されています。

作業効率アップ

いつもの作業に使用するねじを見直すことで、組立工程の簡略化・作業時間の短縮が図れます。また、組付けミスや部品の紛失、複雑なメンテナンス作業などから生じる余分のエネルギー消費を避け、製品の安全性を高めることができます。
ゆるみ止め機能付き製品・座金組み込み製品・シーリング機能付き製品・塗装済み製品・多機能製品など多くの優れた製品があります。

耐薬品

締結部品が劣化することは、安全性や耐久性における大きな問題の一つです。劣化の要因の一つとして様々な薬品があります。この問題を解決するために、溶剤や薬品に強い優れた製品が開発されました。
最近では、耐薬性に優れかつ強度や安全性も兼ね備えた樹脂製品も多数開発され、多くの分野で活用されています。

高強度

安全性・環境への配慮はものづくりの大きな課題です。高強度締結部品はこの課題に取り組むうえで大きな役割を果たします。良い強度の強い製品を使用することにより安全性を高めるだけでなく、強度は落とさず小型軽量化を図り、原材料を少なくすることで環境への配慮を示し、製品価格を抑えることも可能です。
高強度ボルト用に特別開発されたKNDS4鋼製品「14.9超強度六角穴付きボルト」をはじめ、耐蝕性・耐熱性・非磁性・かじり(焼き付き)防止性に優れ、製造過程でのCO₂排出を抑えた高強度ステンレスボルト「BUMAX®」等、様々な課題に応える製品も多数あります。

軽量

製品の軽量化は人と地球にやさしいものづくりに大きな貢献を果たします。近年では強度・耐食性・リサイクル性・意匠性の高い軽量締結製品が注目されています。
製品全体の軽量化・コンパクト化による輸送コストの削減にとどまらず、安全性が長く続き交換・メンテナンス資材や手間を軽減すること、作業者や利用者の負担の軽減など多くの利点があります。このため自動車をはじめ、福祉機器、電子機器など様々な業界に幅広く活用されています。

意匠性

締結部品は、本来の目的である「結び合わせること」に加え、作業者や利用者の安全性やデザイン性も考慮し様々な製品が開発されてきました。
例えば穴付きボルトは、20世紀の初めの頃、四角ボルトの頭部が衣服などに引っ掛かり作業者を危険にさらすことを改善するために発明されました。この発明は安全性の向上にとどまらず、様々な頭部形状に応用できる利点を生かして、省スペースや小型軽量化・作業効率アップなどの点でも産業界に大きな変革をもたらしました。
現代では、多様な素材・形状・ねじ頭部への化粧処理・化粧キャップに加え、焼き付き防止製品や・シーリング組込付など、用途や環境に合わせて用いることのできる意匠性の高い製品があります。

絶縁性

電子回路内等で電流が流れるのを防ぐために、また異種金属素材の締結による電食を防ぐ目的で絶縁機能を持つねじやワッシャーが必要とされます。絶縁機能を持つ素材やコーティング、製品を利用することで製品の信頼性を高めることができます。
電流を通しにくい素材である樹脂やセラミックを用いたねじは、種類により耐薬性・耐食性・耐熱性・軽量などの特徴があり、目的・用途に応じて選択可能です。ダイオキシンが発生しない環境に配慮した樹脂もあります。
電流を通しにくいフッ素樹コート加工はあらゆる金属に施工可能です。
ねじと母材の間に挟み込む絶縁ワッシャー・プレート・スリーブは、異種金属素材の締結での電食を防ぐことができます。絶縁ワッシャーを使用する場合は、破損や片締めを避けるため金属ワッシャーと併用する必要があります。