一般にナットと組んで用いるおねじ部品をボルトと呼びます。頭部が六角柱形状の六角ボルトが一般的ですが、蝶型・アイ型・U型・寸切など様々な形状、アジャスト機能を持つものも含まれます。ワッシャーが組み込まれたもの、フランジ付きのものなど2つ以上の機能がある便利な製品もあります。
素材や表面処理が豊富で、様々な機械をはじめ、土木・建築分野など強度が求められる場面でも使用されています。高強度製品は、同強度製品のサイズダウン・軽量化を図ることができ、耐熱性・耐食性など長寿命を生かした運用コストの削減にも貢献します。

六角ボルト

六角ボルト

ボルトの頭部が六角柱形の形状をしたボルトです。スパナ・めがねレンチ等の工具で頭部の外側から締付けることで、十字穴リセスの小ねじ類に比べると強く締結する事ができ、狭い箇所でも取り付けが可能です。材質・表面処理・規格・サイズも豊富で、自動車・機械・建築・橋梁・医療装置や真空装置など幅広い分野で用いられています。脱落防止機能やマイナスリセス付きのものもあります。
首下の長さをねじの「呼び長さ (L)」と言い、ねじ部の外径を「呼び径 (d1)」または「ねじの呼び」と言います。これらが通常ねじを購入する際の「径と長さ」とされます。六角ボルトの場合この長さに頭部を含めないのでご注意ください。頭部の「二面幅」や「対辺」と呼ばれる寸法(s)が六角ボルトを締め付ける工具のサイズを示す数字になります。
首下が長くなると、全ねじ(先端から首元までねじが切られている「押ボルト」 とも呼ばれる)と半ねじ(先端から首下の途中までねじが切られている)の2種類となります。半ねじ / 全ねじの境目はボルトメーカーにより異なる場合がありますので注意が必要です。

フランジボルト

頭部の裾にぐるっとフランジ(スカート状のつば)が付いている六角ボルトです。フランジ付六角ボルトやフランジ付ボルトとも呼ばれます。めがねレンチ、ボックスレンチ等の工具を用いてボルトの外側に力を掛けて強力に締結できます。フランジにより着座面の面積が広く面圧を抑えることができ、高トルクで締結した際のボルトのめり込み(座面陥没)防止やゆるみ止めになります。また長穴や少し大きな穴に対してもそのままで使用可能でワッシャーを組み込む必要がないため、作業効率が上がり人為的ミスを減らすこともできます。
フランジボルトにはフランジ部分がフラットで薄い1種、フランジ部分が厚みがあり円錐形状で傾斜がついている2種があります。現在一般的に現在使用されているフランジボルトのほとんどのものは2種となっています。
高強度製品もあります。

フランジボルト

アイボルト

アイボルト

頭部がリング状になっているボルトです。設機器等に取り付け、リングの部分にフックやロープ等を引っ掛けて吊り上げる、またはコンクリート等に埋め込み、そこにチェーン等を繋げて使用することもあります。リングを下の部材に固定する事が目的のため、ねじ部の長さの種類は少なく標準品と足長品の2種類が一般的です。高強度、耐食性の製品もあります。
重荷重のかかる用途が多いため、リングの部分に破断や変形が生じないよう保証荷重が定められています。一点吊り(垂直吊り)のほか、二点吊り(45度吊り)、四点吊り(多点吊り)などの使用方法もあります。しかし一つの対象物については、ボルトの使用個数には関係なくそのボルトサイズの使用荷重が適用されます。何本使っても使用荷重は一本吊りと同じです。
軸に対して360度、吊り上げ方向に対して180度回転するマルチアイボルトもあります。JISアイボルトに比べ3倍の使用荷重になります。横吊り、斜め吊り、引き起こし作業等にも対応でき、使用しないときには頭部を倒すことができるため、省スペース・安全性にも貢献します。
ねじはいずれも全ねじになります。

Uボルト

一般鋼管用Uボルト、ユーボルトとも呼ばれるUボルトはその名の通りUの字形状のボルトです。両端におねじが切られており、鋼管の上からかぶせるようにしてブラケットや架台などに取付け、反対側からナットを使用して締結します。横走り配管や立て配管を支持する等で一般的に用いられます。立て配管支持の場合振れ止めとしてご使用ください。管自体の重量をUボルトのみで負担することはできません。
一般用に加え胴太の船舶用があり、屋外や船舶・海中構造物にも対応した耐食性の高い製品、足長タイプもあります。
Uボルトは固定する部材の直径によって使用するサイズが決まり、呼び径の大きさでUボルトの太さが決まります。一般鋼管は実寸外径のミリ数ではなく、規格上に設けられている「呼び寸法」で表され、Uボルトのサイズもそれに合わせて表記されます。

Uボルト

蝶ボルト

蝶ボルト

蝶ねじ・蝶ボルトなどとも呼ばれる手で簡単に締付ける事のできるつまみ付きのねじ・ボルトです。つまみの部分が蝶の羽のような形状をしているためにこのように呼ばれます。英語ではこの部分を翼に例えて“wing bolt(ウィングボルト)”と呼びます。食品機械・医療機器・工作機械・農業機械・照明器具その他脱着の繰り返しが多く締め付け強度が不要な場所で使用されています。
蝶ボルトは1種~3種まで規格があります。1種(つまみ端が半円形)と2種(つまみ端が角型 つまみが小型のRタイプ つまみが大型のHタイプにさらに分けられる)はつまみ部分が重厚で高級感があります。3種(つまみが鋼板からのプレス加工 中が空洞)は比較的軽めで安価です。つまみ部分の製法は1種2種が任意、3種はプレス加工と規定されています。
耐薬性・耐食性に優れたステンレス鍛造製品、紛失を防ぐことのできる脱落防止機能付き蝶ボルトなど、用途に合わせて様々な製品があります。

寸切

長ねじや全ねじボルト・総ねじボルトと呼ばれている頭部の無いねじで、全体がねじ部になっています。必要に応じて現場で好きな長さに切断したり、短く切断して工具部品としても利用できます。ナットを両側に取り付け長さを調節したい場合に使われます。長さは285mmか1000mmが定尺と呼ばれ一般的ですが、数メートル近くあるものも製造可能で、大きなものは建築材料としてよく用いられます。
頭部形状は専用機械で平らに処理したもの、切りっぱなしの荒先、撹拌式ケミカルアンカー用等用途に合わせて選択可能です。ねじ山が台形の形状の台形ねじは「送りねじ」「すべりねじ」などと呼ばれ、締結用ではなく工作機械などのシャフトで回転運動を直線運動に変換し対象物の位置調整の目的で使用されます。
高強度寸切BUMAX®は、耐熱性・耐食性・非磁性に優れ、強度を落とすことなくボルトの径を下げることができるので、製品のコンパクト化・軽量化に有効です。
グラインダーなどで寸切りボルトを切断すると、切断した寸切りボルト(長ねじ)の切断面のねじ山がつぶれやすく、ナットが入りづらくなります。この場合、「全ねじカッター」と呼ばれる専用工具で切断するか、先にナットを寸切りボルトに通してから切断することで対処可能です。素材が鉄のものを切断する場合は、切断面が錆びやすいので注意が必要です。

寸切

トリ―マセムス

トリ―マセムス

六角ボルトにあらかじめ座金を組み込んだボルトで、座金組込六角ボルトとも呼ばれます。
六角形の頭をトリミング成型し(トリーマ)、座金(ワッシャー)を組み込んだ後、転造によってねじ山を成型します。転造後はねじの山径の方がワッシャーの内径より大きくなり外れなくなります。通常のワッシャー同様、座面陥没防止やゆるみ止めの効果があります。座金組込の手間を省き、組込忘れや座金脱落の煩わしさを解消。作業能率を上げ、時間と労力を節約できます。座金の種類や規格、組み合わせも豊富で、自動車・機械への使用をはじめ、従来のボルトとワッシャーの組み合わせからの変更部品としても人気です。
「セムス」という呼称は1930年代に座金組込ねじを開発、特許を取得したITW(イリノイツールワーク)社の登録商標から来ています。英語 “pre-asSEMbled washers and screws(組み込み済みのワッシャーとねじ)” に含まれる文字列“SEM” に、一般に箱入で買われるので複数形の“S” をつけSEMS(セムス)と名付けました。

アジャストボルト

耐震性を高めたり水平保持や高さ調整を目的に、制御盤・作業台・自動販売機や家具などの下部に設置する、上下の調節が出来る回転する受座の付いたボルトで、アジャスター、アジャスターボルトとも呼ばれます。
重量物用や家具用、コーナー用や耐震用、床面に芯棒を打込む固定用や、後施工で固定できる脚止め金具など様々なタイプと幅広いサイズが特徴で、意匠性に優れたものあります。最近ではDIYで建物を傷つけずに柱を立てたり、地震発生時の家具の転倒防止等使用範囲が広がっています。
全く新しいタイプの耐震材 “ノンブレンNonBuren”が組み込まれた地震対策向けのアジャストボルトは、自己接着(粘着)能力と緩衝(耐震・衝撃吸収)能力をあわせ持つ優れたゲル材ノンブレン(NonBuren)を使用しています。耐久性・耐熱性・耐油性にも非常に優れ、半永久的に使用可能で、地震対策に加え、ベルトコンベアや半導体製造装置などの精密機械の防振などに採用されています。

アジャストボルト

建築・木工用

建築・木工用

土木・鉄骨構造物・木材締結・電気・給排水・建具・家具など、建築・木工の多岐にわたる必要をカバーするための数多くの製品が開発されてきました。それぞれの目的、相手材に合わせて最適な製品を選ぶことにより、安全性を確保し、作業効率を上げ、コストの低減やメンテナンス性の向上に貢献します。
最近では、“人にやさしい” “地球にやさしい” 素材・形状・表面処理も多数開発され、持続可能な世界に貢献することが可能です。
より高い安全性を担保するため、高強度製品も開発されています。高力ボルト・六角ハイテンションボルト・摩擦接合用高力ボルト・高張力ボルト・ハイテンボルトと呼ばれ、専用の平ワッシャー2枚と六角ナットがセットされています。厳密な締め付けトルクの管理が求められる鉄骨構造物の接合に使用されます。

溶接スタッド

スタッド溶接機より放電される電気により、先端の突出し部が溶接され鋼板などにおねじやめねじをたてる事が可能になります。鉄・ステンレス・アルミ・銅・黄銅など同種金属あるいは異種金属の溶接が可能で、下穴や補助材料も必要としないため、作業効率も上がり、美しい仕上がりを得ることができます。
母材の片側だけの作業で、あらゆる姿勢で作業が可能です。資格不要で誰でも施工可能です。
異種素材溶接は、素材や表面処理等により不適合なものもありますので確認が必要です。

溶接スタッド

ジョイントコネクター

ジョイントコネクター

呼び径をM6(並目)に統一し、鬼目ナットやジョイントコネクターナット等と組み合わせて、簡単・確実に高精度な木材製品の構造体の接合をシステム化するために開発されたボルトです。工場で部材を生産し現地で組み立てる「ノックダウン方式」を大型家具でも可能にしました。輸送コストを大幅に抑え、搬入問題を解決。そのため組立家具のみならず、ユニット家具やキャビネット等に幅広く採用されています。
座面が広いため、高トルク締結時の陥没や化粧材の傷付きを防ぎ、接合部の直角度を確保しやすく、美観・強度・直角度を必要とする箱物・脚物等にも利用可能です。
荷重のかかる大型構造体や重量物等に適したタイプや、接合力と経済性の両立を目指したものがあり、(±)プラスマイナスドライバや、より強い力で締結でき作業スペースを節約できる六角レンチなど、工具に合わせたリセスも選択できます。
頭部に樹脂キャップをかぶせ安全性や意匠性を高める従来のものに加え、キャップを必要としない意匠性の高いものも開発されています。

ガス穴付きボルト

ガス抜き穴付押しねじ、エアー抜き穴付押しねじ、真空用穴付押しねじなどとも呼ばれる軸方向にガス排出用の貫通穴を持つ六角ボルトです。半導体製造装置、真空装置、真空容器などの真空領域(チャンバー内)での使用に最適です。六角頭のため上部スペースが無く六角レンチを使えない場所でも使用できます。ねじ底に溜まったガスを素早く排出し目標圧力までより早く到達します。
大気圧から真空に減圧する際、締結時にねじ穴先端の間隙に溜まった気体がわずかずつねじ山の隙間を通って漏れ出て、目標圧力になかなか下がらない、ポンプ停止後徐々に真空度が下がるという「バーチャルリク」が生じます。“ボイルの法則”《温度・質量が一定の条件下おいて(気圧P)×(体積V)=(一定)》によると、空気を大気(1013hPa)から低真空(100Pa程度)に減圧した場合に、体積は1000倍となります。このようにねじ穴奥のわずかな隙間に溜まった空気が真空引きに大きな影響を及ぼします。

ガス穴付きボルト

樹脂ボルト

樹脂ボルト

金属に比べ耐薬性が高い素材として幅広い分野で使用されるようになりました。金属ねじに比べて軽量化できること、耐食性・絶縁性・断熱性・非磁性が高いことも特徴で、自動車や機械製造分野を始め、医療機器・半導体などにも多く使われています。
製品の素材は様々でそれぞれの特徴があり、目的や用途、使用環境に応じて選択可能です。金属との接着・接合・焼きばめが可能なセラミック製や、環境に配慮した生物分解性プラスチックボルト・バイオマスプラスチックボルトも開発されています。